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平成30年度 第2回(11月25日実施) 工事担任者試験 受験レポート 区分:DD第三種 受験地:名古屋(名城大学 八事キャンパス3号館) 天候:晴天 気温:15℃ 概要:この試験は工事担任者試験の区分の一つで、DD種(デジタルデータ)の最下位の試験区分です。 工事担任者は、端末設備(又は自営電気通信設備)を、事業用電気通信回線に接続するために必要な国家資格です。端末設備を事業用電気通信回線に接続して、必要な調整や試験を行ったり、端末設備のうち無資格で接続を行えない機器や配線工事(技術基準認定を受けていない機器や、プラグジャックや電波式などでないもの)を行うために必要となります。なお、分界点より事業者側(電柱側)の線は、電気通信事業者の管理であり、工事担任者が工事することはできません。 試験は、AI種(アナログ)と、DD種(デジタルデータ)の2区分に大別され、AI,DDそれぞれが第1,2,3種と細分化されています。第1種が当該区分の全ての工事の実施及び監督を行え、2,3と下がっていくにつれ、工事と監督を行える回線数や速度の制限を受けますが、難易度が下がり取得しやすくなっていきます。また、AI・DD総合種というAI第一種とDD第一種を合わせた区分もありますが、こちらは、第一種×2でも申請だけで取得でき、総合種との違いはありません。試験を1度で取得するか、2回に分けるかの違いです。 この中でも特に人気があるのが、DD3種で、「デジタル信号の入出力速度が毎秒1ギガビット以下であって、主としてインターネットに接続するための回線に係るものに限る」という条件が付されていますが、この資格で一般的な家庭内に設置されるPC、IP電話機、ブロードバンドルーター、ハブ、無線LANアクセスポイント、ネットワークカメラやホームセキュリティなどのLAN端末機器の工事を行うことができます。 また、主にソフトの部分を取り扱う情報処理技術者試験とは違い、通信回線、通信設備というハード的な部分を扱う情報系試験として、取得を目指したい資格の一つです。
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試験日までの勉強方法 |
この資格の参考書は、リックテレコム社の問題集と標準テキストしかありません。 ネット上での受験レポートを参考にして、方針として 初めて問題集を開いたときは、文章題ですらもう暗号文だらけで、論理回路や情報セキュリティの部分が部分的に解答できたのみで、かなり焦りを感じました。しかし、この問題集には詳細な解説がついているので、それらを読み込んでいくと、今までの無線従事者国家試験や情報処理技術者試験で培ってきた断片的なものが、徐々に蘇り、関連付けられていき、技術と理論についてはそれなりに理解して解答できるようになっていきました。 問題は、法規です。電気通信事業法など、一般利用者が目にすることなどない法令からの出題で、結構、〜〜Vや??Hz、〇回など混同しやすい数字が多く、試験問題もこれらを巧みに突いてくるので、それぞれ過去問で出題されている法令の数字類は、暗唱できるレベルで暗記しました。また、用語の間違いなどを問う問題は、過去問回しで馴れてしまえば違和感を感じるようになりました。 計算問題は、パターンがあるので、パターンを分析した邪道な対策をしました。数字そのものは、計算しやすい数字が使われています。(無限に割り切れなかったりすることはないようです) ただ、過去問中心の試験対策で本当に合格できるのかという不安は抱えたまま、受験日を迎えました。
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試験日 |
法令の数字系だけ、別にノートしたものを入室前まで見ていました。この数字系ノートだけで4問拾えました。それぐらい、数字だけを変化させた、いやらしい問題が頻出します。 12時40分スタート。眠気防止のため、昼食は抜きました。 学生の集団受験が多数。一般受験は50代ぐらいの方まで。女性は数名のみ。 解答はとりあえず基礎、技術、法規と順番に一通り解答しました。ただし、回路問題は既出パターンと違うものでしたのでとりあえず飛ばしました。ベン図や2進数、論理回路も頭が元気なうちに順番に片づけました。また、ブール代数は予定どおり捨てました。 一通り解答してみての率直な感想は、単純な過去問暗記では合格できない、と感じました。確かに過去問そのままという問題も多く見受けられましたが、文章題丸暗記のみだと半分か合格ラインぎりぎり取れる程度でしょう。この過去問文章題のみでは合格させない微妙なラインは2アマの試験を思い起しました。 基礎は、1問(ア)、(イ)が必ず回路計算の問題ですが、2問とも私の嫌いな捨てパターンと変形新問でしたので、勘マークとなりましたが、1問運で拾えました。他、文章題は過去問そのままと文章の一部変更(答えが変わります)が多数、また、新問1問は意味不明でしたが、選択肢が過去問回しで出たことのあるのが1つだけでそれを選んだら拾えました。他、簡易な計算系の文章題は、数字や穴空きの位置が変わっていました。ベン図や2進数、論理回路はちょい面倒ですが、出題パターンが安定しているので、冷静に取り組めば良い得点源です。 技術は、過去問そのままが他の区分に比べると少なく、問題も複数の過去問の合体などかなり変形されていました。また、新問も3問ありましたが、過去問の理屈を理解していれば、応用で導き出せるものでした。 法規は、やはり、数字や文言が少し違ういやらしい問題が多く、間違い探しでした。ただ、出題される条文や定義はだいたい決まっているので、過去問演習で出題された部分の条文はしっかり覚えておくと良いと思います。 一通り解答後は、見直しながら再度解いて(計算もやりなおして)、シートへマーク。3度目でマークチェックをして、13時55分に退室しました。 試験開始後40分で退室できますが、3分の1は40分でいなくなりました。この試験は科目合格や免除があるので、科目が少ない人なのか、諦めなのかは謎です。私の退室時に辺りを見回すと、既に8割ほどいなくなっていました。 |
試験を終えてみて |
試験のレベルとしては、2アマの対策と似たような感じで良いかと思います。 ・過去問を重点的に学習(過去問そのまま出題も半分ほどあるから、それらは確実に取れるように) ・回路問題はパターンが決まっているが、パターンが多く、いやらしい (同じ回路図でも数字が違う上に求める値が過去問ではΩだったのに、AやVになるのは当たり前でここが2アマより高度) ・法規は、細かい数字類に注意 ・計算苦手でも、ベン図、2進数、論理回路はパターンが安定しており、解き方を身に着ければ解けます。これだけで15点拾えます。 ・ブール代数は、勉強にも当日の解答にも時間がかかるので、基本的には手を付けない。(勉強すらしない、苦労しても配点は5点です。) 同じ総務省系の無線従事者国家試験3,4アマや2,3級陸上・海上特殊無線技士のような過去問そのまま9割出題で確実に合格点というほど甘い試験ではありませんので、そこは注意してください。 |
工事担任者について |
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正直なところ、この工事担任者に求められている役割を正確に理解するには、各種法規の整備や周知が十分とはいえず、無資格者による工事が横行しているのが現状です。 私自身、資格取得にあたり勉強をしてもなお、正確に役割を把握することができていないと思います。 この項では、私が法規や文献等を参考にまとめた工事担任者の役割について、付記しておきたいと思います。 まず、大前提として工事担任者は、端末機器等(分界点から見て利用者側)の工事を行う資格です。分界点から電気通信事業者側は、電気通信主任技術者による監督を受けるもので、工事担任者資格は意味を持ちません。工事担任者DD3でも光ファイバーの接合方法などについても知識を問われますが、工事担任者資格を根拠に架線のクロージャ―から光回線を引っ張ってきて、ONUを設置することはできません。仮に光ファイバーを扱うとすれば、利用者側LANを光ネットワークで構築する場合ですが、まずないですね。 なので、一般的な光開通工事で来るNTTの人は、電気通信事業者側までの工事は事業者に選任されている電気通信主任技術者の監督(かなり難関な試験なので一般の作業員が有資格者であることはまずないし、選任されていないと有資格者でも法的権限なし)により工事を行い、利用者側の工事は工事担任者の監督(自身が有資格者である場合は本人の責任)により工事を行うこととなります。 工事担任者の電気通信事業法上の役割: 第七十一条 利用者は、端末設備又は自営電気通信設備を接続するときは、工事担任者資格者証の交付を受けている者(以下「工事担任者」という。)に、当該工事担任者資格者証の種類に応じ、これに係る工事を行わせ、又は実地に監督させなければならない。ただし、総務省令で定める場合は、この限りでない。 2 工事担任者は、その工事の実施又は監督の職務を誠実に行わなければならない。 ここでは、事業用電気通信設備に端末設備などを接続するときには、工事担任者に工事をさせるか、監督させなさいという程度です。 上記電気通信事業法条文の「総務省令で定める場合」に該当する下位に郵政省令として「工事担任者規則」があります。 第3条で、いきなり「工事担任者を要しない工事」が定められていて、以下のように記載があります。 第三条 法第七十一条第一項ただし書の総務省令で定める場合は、次のとおりとする。 一 専用設備(電気通信事業法施行規則(昭和六十年郵政省令第二十五号)第二条第二項に規定する専用の役務に係る電気通信設備をいう。)に端末設備又は自営電気通信設備(以下「端末設備等」という。)を接続するとき。 二 船舶又は航空機に設置する端末設備(総務大臣が別に告示するものに限る。)を接続するとき。 三 適合表示端末機器、電気通信事業法施行規則第三十二条第一項第四号に規定する端末設備、同項第五号に規定する端末機器又は同項第七号に規定する端末設備を総務大臣が別に告示する方式により接続するとき。 ここで、ある程度工事担任者が不要な工事が定義されています。専用設備に接続する端末設備等、船舶又は航空機に設置される端末設備等、適合表示端末機器等を「総務大臣が別に告示する方法により接続するとき」、とある程度具体的に出そろいました。 つぎは、「総務大臣が別に告示する方法により接続するとき」についてですが、こちらは、郵政省告示(昭和60年 第224号)「工事担任者を要しない端末機器の接続の方式を定める件」により、次のように告示されています。 ※ 工事担任者を要しない端末機器の接続の方式 一 プラグジャック方式により接続する接続の方式 二 アダプタ式ジャック方式により接続する接続の方式 三 音響結合方式により接続する接続の方式 四 電波により接続する接続の方式 これでやっと、適合表示端末機器等を、プラグジャック・アダプタ式ジャック・音響結合方式・電波のいずれかの方法により接続する場合、工事担任者が不要であるということが定まり、この逆を考えることにより工事担任者が必要な工事というものが分かるようになります。 よくありそうな次の実例を資料を元に考えてみました。DDで考えています。 フレッツ系回線の分界点は、NTTの場合「回線終端装置のイーサネットポート(UNI)」です。UNIは通常は機器内部で内蔵ルータと接続され、背面HUBと電話ポートに分かれます。アナログ回線(保安器)とは異なりますし、引き込み点などでもありません。また、光ケーブルは電気を通さないため、「保安器」がありません。 NTTフレッツ光系の分界点の概念(保守責任範囲とは異なります)。 ・光回線工事の際に、宅内に設置される機器は、正式には「ひかり電話ルータ」と言い、ONUとルータ(スイッチングハブ)を1つの筐体に内蔵した装置です。 ・基本的にひかり電話ルータの内蔵ルータを使用すれば問題ありませんが、都合により自身で準備しているルータを使用したい場合、UNIポートの配線を外すと、内蔵ルータ部を切り離すことができます。UNIポートは初期のBフレッツと同じで、光とイーサネットのメディアコンバートのみですので、UNIポートにはPPPoEセッションをリンクすることができる機器(一般的にはブロードバンドルータ)のみ接続可能となります。 ・ひかり電話を使用している場合、ひかり電話機能もルータ側にありますので、自身でルータを準備する場合、ひかり電話対応のルータを用意する必要があります。 ・この概念を理解しておくと、下記の説明が分かりやすくなります。
まとめ: ・分界点(回線終端装置のUNIポート)には、要注意。 技術基準適合認定を受けた機器を、プラグジャック方式などの方法で、技術基準の適合性に影響を及ぼす恐れのない場合(市販や機器付属のLANケーブルを使用)のみ、工事担任者でなくても接続工事ができる。 ・技術基準適合認定を受けているルータの配下(ひかり電話内蔵ルータを含む)に接続する場合、配下の機器は技術基準適合認定は不要。PCの有線LAN部やHUBは、技術基準適合認定を受けていない場合が多い。ただし、裸配線工事は別の話で、配下であっても工事担任者が必要(次項参照)。 ・裸配線(情報ジャックコンセントなど)は、 現に事業用電気通信設備に接続されているか、接続しようとする場合は、工事担任者が必要。 事業用電気通信設備に接続されていない場合は、工事担任者が不要。 プラグ式LANケーブルの交換は、事業用電気通信設備に接続されていても、工事担任者は不要。 ・工事しようとする区間が、「アナログ」なのか「デジタル」なのかをよく確認。 |
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