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− 研究レポート −

 

件 名 アマチュア局向け 電波の強度に対する安全施設(電波防護指針)について (No.4)
公開日 2024-06-15
更新日 ****-**-** (0)


総務省公式
 https://www.tele.soumu.go.jp/j/others/amateur/confirmation/safety/

 

簡単な経緯、目的、概説

  • 2024年3月22日の電波法関係法令等改正の施行により、従来は空中線電力200Wを超える移動しないアマチュア局(検査対象 局)に対してのみ課されていた「電波の強度に対する安全施設」の確認が、すべての移動しないアマチュア局に対して行われ ることに なりました。

  • 検査対象局以外には聞きなれない「安全施設」や「防護指針」という用語が頻出しますが、まずこの制度を正しく理解す るにはこれら の用語を正しく理解する必要があります。

  • 電波(電磁波)の人体への影響と法規制
    電波(電磁波)には、長年の研究により「刺激作用」と「熱作用」が発生することが科学的に分かっています。刺激作用 は10MHz 以下の周波数で発生し、神経や筋の興奮(チクチク、ピリピリする等)、熱作用は100kHz以上の周波数で発生し、主に体温の上 昇が確認されています。電子レンジはこのうち「熱作用」を応用したものの代表的なものです。これらの人体への悪影響 が起きない (人体が許容することができる)電界強度(電波の強さ)の基準は、電波法施行規則(第21条の4、別表第2号3の3)で定められており、それを更に具体化 したものを「(電波)防護指針」と呼び、正式には「人体の 健康に好ましくない影響を及ぼさない電波の強さの指針」といいます。

  • 基準値と安全施設
    防護指針の基準値は、現段階の研究に成果で間違いなく安全とされている値(余裕を持っている)であるため、基準値を 満たせば人体 への悪影響はまず発生しません。全ての無線局が防護指針の基準値以下で運用すれば確実に安全ではあるのですが、無線局はその目的 上、必要な通信距離を確保する必要があり、そのためには電波を強くする必要があります。そうするとどうしても防護指 針の基準値を 超えてしまうことがあります。そのような場合、一般の人々を刺激作用や熱作用から保護するため、防護指針の基準値を超える場所に 一般の人々が簡単に出入りすることができないように、塀、柵等を設けることが無線局の開設者に義務付けられており、 これを「安全 施設」と呼びます。

    勘違いしていけないのは、「防護指針の基準値を超える電界強度を無線局は出してはいけない」ということではなく、 「一般の人々を保護するため、人体に悪影響があるとされる基準値を超える場所には一般の人が出入りできないように安 全施設を設けてください」という趣旨のものです。安全施設を設けるには、無線局の開設者が管理占有している場所でな ければできないので、基本的には無線設備設置場所の敷地境界線(アパート等の集合住宅の場合は管理占有している範囲 の境界線)において、この基準値と安全施設の状況を確認するという制度です。





アマチュア局(200W以下)は 何をすべきか

  • ここからは、200W以下のアマチュア局は何をやればよいのかということに重点を置いて実用的な説明していきます。

  • 現在、移動しないアマチュア局に対して、手続上求められていることは「電界強度を算出して適合確認を 行う」→「適合するように工事設計を見直し、安全施設を設ける」→「確認書類を提出する」の3点です。以下で、その概要 を 説明していきます。なお、移動するアマチュア局は除外されていますので、不要です。
    移動するアマチュア局(移動範囲に「陸上・海上・上空」と記載されている局)を、自らの意思で特定の場所で固定して (移動せず)運用することは、移動しないアマチュア局には該当しませんので、適合確認は不要ですので、50W以下で あれば、移動する予定が皆無でも移動するアマチュア局で免許を受けることをお勧めします(50Wまでは移動の有無に よって費用や扱える電力等に変わりはありませんので、移動するアマチュア局の方が非常に楽です。)


  • 適合確認書が必要な手続
    新規開設(開局)
     空中線電力を問わず、提出が必要です。ただし20mW(0.02W)以下の局については提出不要ですが、 アマチュアで20mWはほぼ該当しないと考えられます。
    変更申請(届)
     適合表示無線設備のみの取替も含む、空中線電力の大小も不問、アンテナの増設変更や敷地内でもアンテナを移設して 距離が変化した場合、設置場所の変更を含みます。軽微な変更届となる場合でも提出が必要です。

    不要な場合
     ・確認書を提出済みの局で、すでに提出している確認書に変更がない変更申請
      たとえば200Wで確認した局が、アンテナ等変更なく新たな200W機を増設したなど)の場合、その旨を備考等 に記載することにより確認書の提出を省略することができます。
     ・再免許
      現在のところ、確認書未提出の局が再免許を受ける場合、確認書は提出不要ですが、再免許後も変更申請を提出する 場合は確認書を提出する義務は残ります。
     ・無線設備やアンテナの一部撤去の申請又は全部撤去(廃局)の申請



  • 適合確認(計算)を行う
    まずは、200W以下のアマチュア局で義務化前から自主的に適合確認をして自局の電界 強度を把握しているという局はきわめて少ないかと思いますので、自局の実力確認という意味で、まずは実際に計算をし てみます。
    法令や防護指針等の諸規則に則って自ら根拠をもって計算することもできますが、相当な知識理解が必要となるため、ア マチュア局に対しては総務省が公開している「簡易な適合確認プログラム」又は、「簡易な適合確認書」を用いて簡易に 確認(計算)することが認められています。

    また、計算に代えて、校正された測定器を用いた所定の方法による「実測」によることも制度としては可能です。検査対 象局が計算上は基準値を超えてしまう場合でも、実測で問題なければ検査に合格できるというものですが、検査のない 200W以下の局では費用等の問題で現実的ではないので本稿では省略します。


  • 安全施設を設ける又は適合するように工事設計を見直す
    計算した結果、無線局の構外(アマチュア局の場合は設置場所(自宅)との境界線)で、 基準値を超える場合は、適合しないと判定されますので、適合するように工事設計を見直す必要があります。
    アマチュアレベルでもできそうな対策は次の4つになると思います。
    「アンテナの高さを高くする」、「アンテナの位置を境界線から遠くする」、「空中線電力を下げる」、「利得を下げる (アンテナを変更する)」
    また、自宅敷地内で基準値を超える場所がある場合、敷地内に一般の人が容易に立ち入れない(誤って立ち入れない)よ うに安全施設を設ける必要があります。


  • 確認書類を提出する
    無線局関係申請(届)書に、確認書類として前述の「簡易な適合確認プログラム」又は、 「簡易な適合確認書」を添付して申請します。ファイルそのものでなくても、書面申請の場合、数値等が分かる部分の印 刷でも構いません。2024年6月時点では、「新規開設」、「変更(設置場所の変更を含む)」に対して添付が義務化 されており、添付されていないと「補正」になります。「再免許」と「撤去(又は廃局)」の申請に対してのみ、確認書 類は不要です。




準備するも の
  • 基本的な計算に必要なものは次の値です。

  • 送信空中線の高さ(地上からアンテナ本体の構成物までの最接近距離)
    給電部やエレメント等の特定の部品による位置ではなく、そのアンテナがアンテナと して動作する構成物までの最接近距離となります。
    下図のGPアンテナを地上に設置した例なら、エレメントがアンテナとして動作する構造物の最下端となるので、エ レメント部となります。よく分からない場合は、アンテナそのものの構造物の下端としておけば無難だと思います。 マスト、ステー、ステーワイヤーなどの支持物はそれらをアンテナとして動作させていなければ含みません。
    アパート、マンション等で階上、階下がある場合の注意
     階上の場合はアンテナ構成物の頂頭部、階下は下端部となりますので、下記の例示であれば、階上はアンテナ本体 の頂頭部、階下はエレメントまでの距離となり、そのうち最接近(短い距離)を計算に用います。よって、基本的に はアパマンでは最上階であるという条件以外では、高さはほとんど確保できないことになります。例えば、バルコ ニーに全長2mのアンテナを垂直90°で1mの位置に取りつけた場合、階上と階下の方がバルコニーに出た時を想 定すると、階上の方はほぼ0、階下の方で1m程度しか計算上の高さは確保できませんので、バルコニーから突き出 すことにより水平距離を確保することが主な対策となるかと思います。なお、低層階の場合は更に、一戸建て住宅と 同じように道路や駐車場などの共用部といった部分も一般の人が出入りする部分となりますので、考慮しなければな りません。


  • 送信空中線直下からの水平距離(境界線からアンテナの構成物(エレメント等)までの最接近距離)
    下図八木アンテナの例では、回転した場合に、アンテナの本体構成物が敷地境界に最 接近する距離(青丸)の距離が、最接近距離となります。
    中心点などではありません。
    アパマンの場合は、占有境界(自室外)の距離までを最接近距離とします。



  • アンテナの絶対利得
    カタログや説明書に記載されている値でも計算値として使用できますが、特に短縮ア ンテナは正確な利得が記載されていないことがほとんどです。国内メーカー製のアンテナであれば、「防護指針の計 算のために必要」と説明すれば値を開示してもらえると思います。

  • 各周波数帯の送信機の出力(複数ある場合は最も大きいもの)


 

適合確認(計算)を行う

  • では、実際に適合確認(計算)を行うノウハウを説明しますが、その前に数点理解しておくべき事項がありますので、ま ずはそれらを説明します。

  • 一般の人々が通常出入りする場所(境界線の定義)
    これは、計算の根幹をなす大変重要な定義ですので、誤らないようにしてください。
    無線設備の設置場所が、一戸建ての自宅などの自身が所有(管理、占有)している 場所
     境界線外(お隣さんの土地、道路、田んぼ、畑等)は一般の人々が通常出入りする場所に該当します。従って、無難な 計算上の境界線までの距離の基準位置は、設置場所の土地境界線です。(隣接する土地が山や河川等の水面の場合は、通 常出入りする場所とはしないとの情報もありますのであるなら個別に確認してください。)
    マンション、アパートなどの共用住宅の場合
     専有部の境界が計算上の境界線となり、専有部外となる通路などの共用部はもちろん、お隣、階上、階下は一般の人々 が通常出入りする場所に該当します。自室前のバルコニー(ベランダ)は、専有部ではないことがほとんどですが、「専 用使用権」があると解されるのが一般的で、一般の人が通常出入りする場所には該当しませんが、逆にお隣、階上や階下 のバルコニーは一般の人が通常出入りする場所に該当します。低層階の場合、加えて道路や駐車場なども自身が占有して 安全施設を設けることができる訳ではありませんので考慮しなければなりません。

  • アンテナとの距離
    上述していますが、給電部やアンテナの中心部など特定の部品からの距離ではなく、エレ メントなどアンテナ本体の構成物の一番外側を基準とします。マスト、ステー、ステーワイヤー等はアンテナ本体の構成 物ではないのでそれらを電気的に使用しなければ通常は含みません。ダイポールや八木など回転するアンテナの場合は、 回転した時に境界線と近い構成物とのの距離となります。

  • 利得(ゲイン)
    総務省のウェブページでの確認書等は「2.15dBi(絶対利得)」の「半波長ダイ ポールアンテナ」の値が設定されています。八木アンテナ等で2.15dBi を超えるアンテナがある場合は、実際のアンテナの利得を使用する必要があります。

  • まず初手は「簡易な適合確認書(計算不要)」を使用します。これは境界線とアンテナとの最短水平距離のみを確認し、 各周波数帯ごとに定められている距離を満たせば適合として判断するものです。
    ただし、2.15dBiを超えるアンテナがある場合は、これは使用できませんので、次項の「簡易な適合確認プログラム」 を使用してください。
    この簡易な適合確認書で適合すれば、文句なしの適合です。もし不適合でも心配しないで ください。この簡易な適合確認書は、簡易な適合確認であるが故に、かなり余裕をもった、「これなら基準値を超える事 は絶対ない」というオーバーな値で計算されたものですので、次述の「簡易な適合確認プログラム」で計算しなおすこと により、適合できることがあります。

  • 「簡易な適合確認プログラム」
    前述の「簡易な適合確認書」は、水平距離のみを基準として簡易計算するものでしたが、このプログラムを用 いると、垂直距離(高さ)、給電線損失、利得などの要素を個別に設定して計算することができます。
    まずは、送信機出力はもっとも大きいもの、給電線損失は0dB、平均電力率は1、アン テナ利得は調べてある値(明らかに半波長ダイポール以下のアンテナならとりあえず2.15dBi)とし、高さ等は実 測した最接近距離、大地反射と強い反射は設置場所の事情に応じて設定してください。
    大地(水面等)反射
     いわゆるグレーゾーン項目ですので、×(考慮しない)で良いかと思います。
     別の資料によれば地上高が極めて大地や水面に近い(低い)アンテナの場合は
    又は△(考慮する)にしてくださいとされて いました。ただし、(大 地考慮)にすると電界強度が4倍(144MHz以上は2.56倍)の値となり適合が難しくなります。△(水面考慮) にすると、144MHz以上が4倍となり更に厳しい値になります。
     地上高が極めて低いアンテナという定義は明確ではありませんが、実例として筆者では短縮アンテナ(GPとダイポー ル)を8mHで×(考慮しない)で審査通過しています。
    強い反射
     ビル、鉄塔、金属(トタン張り)の建物等など、アンテナからの電波を跳ね返しようなものが近所にあるなら、
    (考慮する)にしてください。ただし、○に すると電界強度が2倍の値となり、適合が難しくなります。近所という定義も明確ではありませんので、そこは総通に個 別にご確認頂くか自己判断してください。

    これで送信機が発射することのできる全てのバンドが適合すれば、適合確認は終了です。適合しない場合は、後述の適合しな いときの対処例を参考にして適合するようにしてください。



適合するよ うに工事設計を見直し、安全施設を設ける

  • 工事設計を見直す(適合しないときの対処例)
    もし、適合していない場合は、確認書を提出しても原則申請は通りませんので、適合するように処置する必要がありま す。
    代表的な対処例としては、「アンテナの高さを高くする」、「アンテナの位置を境界 線から遠くする」、「空中線電力を下げる」、「利得を下げる(アンテナを変更する)」という対策になるかと思い ます。この中から簡単なアドバイスと少し裏技的なものを紹介します。

    基本的な傾向
     簡易な適合確認プログラムの下の方にある「基準値」を見て頂ければ一目瞭然ですが、ハイバンド (24-144MHz)あたりが厳しめの値になっていると思います。これは周波数帯により人体が影響を受ける電界強度のしきい値が違うためです。一番厳し い50MHzの基準値でも、HFで200W、2.15dBiの条件で直線距離で4m(地上の場合は、人体の頂頭 部からなので、最低地上高は6m)以上確保できていれば、アンテナの直下 に人がいても適合できますので、一戸建てであればベランダアンテナでも工夫すれば比較的容易な距離です。
     ただ、アパートやマンションなどの集合住宅でベランダアンテナの場合や、一戸建てでも複数のアンテナを設置す るようになると、どうしてもアンテナ相互が干渉しないように離して設置していくと、敷地境界に近いアンテナがで てきます。アパマンの場合は、階上や両隣との距離も計算に入れなければなりません。そうなりますと、基準値の厳 しい24-50MHzで適合ができないというパターンが多いかと思いま す。144MHzも50Wとはいえ、八木等利得の高いアンテナが用いられることも多いので油断はできません。

    アンテナの高さ又は位置を変える

     これができるなら、一番効果があります。適合確認プログラムで試しに地上高や水平距離を変えてみると分かると 思いますが、加速度的に電界強度が下がります。ただし、既に設置されているアンテナの場合、費用や手間もかかる と思いますので、次述の「利得を下げる」を検討してみてからでもいいと思います。アパマンの場合は、高さを変え ようにも上層階と下層階と挟まれている場合は、対処できないので、水平距離をできるだけ突き出すことで対処しな ければなりませんが、前述の通り低層階の場合は、突き出した先が道路や駐車場であればその距離も考慮する必要が あり、非常に複雑です。

    利得を下げる

     利得を下げると聞くと、アンテナを効率の悪いものに変えるのか!とお叱りを受けそうですが、そうではありませ ん。実際に使用しているアンテナが短縮アンテナである等、半波長ダイポールアンテナ以下(2.15dBi)の場 合、実際のアンテナの利得(アンテナゲイン)を用いて計算することができます。メーカー等からシミュレーション 値でも良いので開示を受け、その値が2.15dBi以下であれば、その値を用いることにより、より適合できる可 能性が高くなります。
     以下は私の局で使用している、某メーカーの短縮アンテナのゲインの一例です。ご覧のとおりマイナスゲインが 並んでいます。全て2.15dBiよりは低い値です。私の局は、一戸建てですがメンテナンス性などを考慮してベ ランダアンテナとしているため簡易な適合確認書では不適合、簡易な適合確認プログラムで2.15dBiを用いて 計算すると適合とはなりましたが、実力値を知りたかったので、実際に使用するアンテナのうち一番高い利得で計算 しなおしたところ、かなり余裕で適合となりました。
    周 波数帯
    1.9
    3.5
    3.8
    7
    10
    14
    18
    21
    24
    28
    利 得R
    -17.55
    -13.21
    -12.97
    -6.00
    -3.69
    -1.94
    -1.36
    -0.78
    -0.20
    0.15
    利 得H



    -8.10

    -5.60

    -3.90

    -0.60
    利 得C



    -3.30

    -1.50

    -0.20

    0.50
    利 得A



    -6.90

    -4.50

    -3.10

    -2.10
    (これは某機種の例示で、メーカーや機種により、かなり値が異なりますので、必 ずご自身ご利用のアンテナの値をメーカー等に確認してください。絶対にこの値を計算には使わないようにしてくだ さい。利得の後の英字は私の覚書です。)
     特にアパマン運用の方は、そう大きなアンテナを設置されることは少なく、短縮アンテナで運用されている例が多 いのに、素直に2.15dBiで適合確認すると不適合で最悪、50Wを超える局は廃局も視野に入れなけれ ばならないということになりかねませんが、このように根拠があればマイナスゲインを計算に使用することができま すので、適合が少しでも楽になると思います。

    隣地の所有者の合意をもらう
     隣地が、畑、田んぼ、空地、ソーラー発電施設のような人が通常人が出入りしない土地の場合は、その土地の利用 法 が変わりなく続く限り、所有者の合意のもと、安全施設を設けた上で、人が通常出入りしない場所として、隣地の境 界までを境界として計算することができることがあります。人が立ち入っている時は運用しないという条件をつける とより審査が通りやすくなるかもしれません。
     
    隣地が住宅の場合は人が居住していますので人体の安全を目的 とする防護指針の性質上、合意の有無に関わらず境界内とすることは難しいと思われます。

    平均電力率を下げる
     平均電力率は6分間の平均電力率と定義されています。昨今はFT8系をはじめとするデジタルモードが盛んで、 総通でもデジタルモードがある場合、不明な場合は、平 均電力率を「1」で計算するように指導はしています。1=100%(6分間フル電力送信)のことです。実際のFT8交信は15秒送信、15秒受信ですの で、実際の平 均電力率は「0.5」です。これを根拠に、「デジタルモードはFT8又はFT4でしか運用しないことを条件」として、平均電力率 0.5として確認して適合するという方法です。ただし、タイムシーケンスが明確でない他のデジタルモード (SSTV/RTTY等)は、理論上は連続送信も可能であるため、0.5で適合確認するとそれらの他のデジタル モードの使用はできませんので、前述のとおりその旨を条件として明記する必要があります。なお、CWなら 0.5、SSBは0.16で計算できます。複数のモードがある場合は最も大きい電力率を使用します。1.0を超 える値はありません。

    実測する(検査を受ける)又は自分で詳細計算する
     お金と手間はかかりますが、業者に依頼等して実測するか、自分で詳細計算し、その結果を確認書として提出する こともできます。というのは、前述の計算はすべて「簡易な適合確認」という文言がついていて、簡単に確認(計 算)できる代わりに、それなりの余裕を見た結果となるようになっています。これが一番確実な正攻法ではあります ので、簡易な適合確認では基準を満たさないが、実際は超えてない見込み(自信)がある!という場合は検討してみ てもいいのではないでしょうか(笑)。



  • 安全施設を設ける
    一般の人々が通常出入りする場所とされる「境界線」を基準に計算して適合を確認は できましたが、よほど地上高が確保されている場合を除いて、境界線内(自宅敷地内)のどこかは電界強度が基準を 超える場所があるかと思います。このような基準値越えの場所には、一般の人々が容易に出入りすることができない ように、塀、柵などの施設をする必要があります。極論ですが、地上高を十分確保する設計にして、境界線内のどこ でも電界強度が基準値以下なら安全施設は一切不要です。

    安全施設というとなんかたいそう面倒なことをやらなければいけない感じがしますが、具体的には、ごく普通にお隣 さんとの境界にある塀やフェンス、生垣、門扉等で何ら支障がありません。あくまで一般の人が道路や公共施設と思 い込んで過 失でふらっと立ち入ってしまうということを防げればよいので、「施錠する」、「相当高さの塀を設ける」といった 「侵入しようとする悪意を持った者に対する対策」は不要です。また、アマチュア局に対しては「強電界注意」のよ うな掲示等も求められていません。

    なお、境界線内の基準越えの強電界については、無線従事者が有資格者として責任をもって管理してください。法は そ こまで干渉しません。できる限り電磁波の輻射を人体が受けないように、電波発射時には家人を含めて屋外には出ない、窓等は閉 める、アンテナには近寄らない、必要最小限の空中線電力で運用する…あとはピリピリチクチクしたり、頭がぼーっ としてきたら運用をやめるとかですね。健康を損なわないようにアマチュア無線を楽しんでください。





確認書を提出する
  • 適合が確認できましたら、確認書類を作成します。簡易な適合確認の場合はそれぞれのファイルを印刷または添付して、 別の根拠により計算した場合はその計算過程や根拠などを示した書類を作成します。

    マイナスゲイン等を用いた場合や、隣地も境界線内と扱った場合も、必要に応じてその資料を提出できるように準備して おきます。
    また、変わった条件等を用いたい場合は、予め所轄の地方総通に相談されることをお勧めします。

    検査対象局には「平面図(敷地のアンテナの配置と境界線までの距離図、上空から見た図)」、「立面図(アンテナの高 さ方向の距離図、普通に横から見た図)」が求められていますが、原則として200W以下の場合は「確認書」のみで良 いとされてはいますが、審査上必要であればこれらの資料の提出も求められることがありますので、くれぐれも虚偽の値 は用いないようにしてください。
    なお、「自宅周辺の地図」は、防護指針関係ではなく、電波障害関係の書類となりますので、不要です。

    なお、不適合又は不正な値や根拠で提出して総通の落成(変更)検査を受けた結果、不適合と断定されてその後の是正が できないと、技術基準不適合により無線局免許が拒否又は取り消しされる恐れがありますので、簡易な適合プログラム以 外で計算される際は十分にご注意ください。



確認書未提 出局はどうふるまえばいいのか

  • 実は、この電波防護指針そのものはかなり前から移動しない全てのアマチュア局に適用されており、200W以下の アマチュア局に対してはほとんどの地方総通で、わざわざ確認書の提出までは求めていなかったというだけで、遵守すべ き技術基準の1つとされていました。(北海道総通では前から先行して確認書、平面 図、立面図を要求していたようです。)

    アマチュア局の申請書を自分でお書きになった方なら覚えがあるかもしれませんが、 工事設計書の一番下にある「その他の工事設計 電波法第3章に規定する条件に合致する。」の欄で す。定型句のようなものと思われている方もいらっしゃるでしょうが、これは「ここに書かれていないその他の工事 設計は、電波法第3章の規定に合致しています」と宣言しているもので、防護指針も電波法第3章に規定する条件の 1つであるため、確認書を提出していないからといって防護指針を無視し反する状態でアンテナを設置して無線局を 運用してもよいという訳ではありませんので、誤解のないよう留意してください。
    確認書を提出していなくても、あなたは過去に「
    その他の工事設計/電波法第3章に規定する条件に合 致する。」と宣言して免許(変更許可)を受けていますので、防護指針に反していれば処分の対象にな ります。

    ライトユーザー(50W以下の移動する局で適合表示無線設備のみを使用する局)に対しては申請書の簡略など緩和 されましたので、逆にハイパワー局には規制強化じゃないか!という声も方々から聞かれますが、こうして経緯を 辿ってみると、規制強化ではなく、遵守確認が徹底されるようになったという程度のものです。電波が人体に悪影響 があるということが分かってきた以上、自身やそのご家族の健康のためにも、申請書を作成する折ぐらいは防護指針 に向き合って、健康的にアマチュア無線を楽しみたいものです。



 本項は、2024年6月15日現在で筆者が入手及び理解した内容をまとめたものです。故意に 誤った情報を載せたりはしておりませんが、最終的には申請者と所轄地方総合通信局にてしっかり打ち合わせして、確認書は申請者の 責任において作成してください。本稿のみを妄信して確認書を作成した結果、あなたに損害等が発生しても私は一切責任を負いませ ん。なお、誤り等ございましたら、にお知 らせください。調査して必要であれば加筆訂正いたします。なお、ご質問についてはお受けしておりませんので、お送り頂いてもお返 事は致しませんのでご容赦ください。


 

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