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− 研究レポート −

 

件 名 HDDとSSDの転送速度比較
公開日 2021-11-07
更新日 ****-**-** (0)

 

 
まえがき
 SSDはUSBフラッシュメモリに代表される半導体の高密度、低価格化の更なる進歩により、現実的な価格帯で登場した新しい記憶装置です。

 コンピュータの歴史では半導体(メモリ)の価格が実質的な性能に及ぼす影響は大きく、Windows95-2000あたりの時代では大容量はハードディスクや光ディスク、テープデバイスなどに頼っていました。それらと同じ容量の半導体記憶装置は、現実的な価格帯で製造販売することが難しかったためです。この頃は、1GBのUSBメモリが1万円ほどでした。2021年現在では1GBなど販売されておらず、4GBなら1000円以下、メーカー品の64GBのUSBメモリが1000円前半です。

 半導体の価格の低下につられて、大容量のメインメモリやUSBメモリが安価に出現してきました。それでもなお、ハードディスクが扱うTBクラスでは価格が現実的な価格にまでは至らず、SSDというものが大衆で意識し始められたのは2010年ごろではまだ、庶民的な価格ではなく、我々低所得層にはなかなか採用しにくいところがありました。

 しかし、時は流れ、2020年代に入るとQLC型という方式で一気に低価格化が進み、従来型の磁気ハードディスクのおおよそ2倍程度の価格で購入できるようになりました。

 ハードディスクの動作音、発熱、遅さ、消費電力などを考慮すれば、2倍の価格差なら、SSDを採用し、静かな動作音、ほぼ発熱なし、早い、消費電力少ないという多くのメリットが享受できる環境を目指して、今回その検証結果を中立的な立場から検証を行うこととしました。

 

条件
 今回私が採用したのは、このレポートの執筆時点で最も価格の安いSSD「SAMSUNG 870 QVO(MZ-77Q1T0B/IT)」です。9980円。TBW=360(1TB)、720(2TB)です。

 SSD特有の項目として、TBW(Total Bytes Written)という管理値があり、1TBW=1TBで換算し、書換可能な最大累積データ記録量を示します。360TBWであれば、累積の書き込みが360TBに達すると、寿命が近づいているという判断になります。この累積TBWはSMARTに記録されています。

 今回の実験機:
 デスクトップ MSI / H55M-P33(2010年製) SATA2.0 MEM16GB i7-870(2.93GHz)
 ノート     TOSHIBA / RX73VBP (2016年製) SATA3.0 MEM16GB i5-6200(2.3GHz)

 近頃のPCは元々の性能が高いので、そこそこ古くてもゲームなどグラフィック系を多用する使い方でなければ十分使えますので、故障しないかぎりなかなか買い替え意欲は湧きませんね。(買ったときはもちろんそれなりのスペックでしたよ)

 しかし、Windows10になってからブートしてから落ち着く(起動完了)までがかなり長くなり、すぐにPCを使うということができなくなってきました。起動が完了してしまえばストレスなく使用できるのですが、起動時のハードディスクアクセスランプの点灯具合はかなりのもので、ハードディスクにかなりの負担がかかっているのは容易に想定できますので、今回のSSD化により改善し、更にPCの実用的な寿命を延ばし、静音、省電力を達成できたらと思います。 

 

 
消費電力
 一番分かりやすい部分からチェックしてみました。

 このレポート執筆時点で私が保有しているハードディスクの消費電力は、
 5400rpm(2.5in_1TB) / 0.45-1.7W  7200rpm(3.5in-1TB) / 1.0-6.4W が仕様書の値でした。

 870QVO(1TB)は、0.03-2.2W(1TB)です。

 最大電力では、5400rpmのハードディスクとあまり変わりませんが、待機電力はかなり低くなっています。
 やはり、駆動部分がないというのが顕著に出ているのが最小電力だと思います。

 特にデスクトップで採用されがちな、3.5in-7200rpmのタイプは、最大11Wという大電力を消費するものもありますから、それらと比較すればかなり低いことが分かります。

 

MSI H55M-P33
  • 起動時間(電源ボタンONからハードディスクのアクセスが落ち着くまで)
    • 通常:5分15秒 → 1分55秒
    • 高速スタートアップ:2分50秒

 

  • メインハードディスク  東芝/1TB/7200rpm/SATA600対応 → SSD
     
    • 仮想キャッシュ(RAPID)を有効化

      • SATA2の頭打ちを超える速度!(DRAM使ってるからあたりまえ)
      • DRAMをドライブのキャッシュとして使用する技術です。読み込みでは一度読んだファイルをキャッシュに溜めて置き、2度目はキャッシュから読みだす、書き込みではドライブの速度が間に合わない分を、一旦キャッシュに溜めておいて、見た目では処理を終わらせる方式です。確保されるキャッシュサイズは1GBのようですので、その程度まではキャッシュが効いて高速処理され(たように見え)ます。
      • バックグラウンドではキャッシュをドライブに遅延書き込みで処理していますので、まあ、ちょっとしたインチキですが、細々と何度も読みだされるファイル(OS
        のファイルなど)、普段使いの小さなファイルの大量読み書きにキャッシュは大きな効果を発揮します。
      • 逆に大きなサイズのファイルでは、いずれキャッシュ切れを起こすだけですので、ドライブ本体の速度を向上すべきということになります。
      • 磁気式ハードディスクもこのキャッシュの大きさがやはり大きい方がいいということでできれば大きいものをという風潮はありましたが、磁気式の場合、8-128MB程度なので、まああれば尚良しといった感じで、そこまでこだわる項目でもなかったのですが。

 

  • 作業用予備ハードディスク  サムスン/80GB/7200rpm/SATA300対応

 

  • [参考] MSIのメインと同じモデルのハードディスク(以下「比較テスト用」)をUSB2.0接続した

    予想通りの36MB/sとUSB2.0の頭打ちに出会いました。

 

  • ハードディスク / マザーがSATA2なので、300MB/sまでしか出ませんが、作業用予備の遅さには改めてびっくりです。
    メインの方はハードディスク自体はSATA3(600MB/s)対応なので、頭打ちの値が出るかと思いましたが、200にも届いていません。遅い訳ですね。

 

  • SSD / 258MB/s以上とSATA2の頭打ちの値が出ていますので、これ以上はこのマシンでは望めません。PCIeでのSATA3ボードの増設も考えましたが、空きスロットがPCIe1.1(Gen1)しかないので、これはSATA2と同速なのでPCIe経由したところでほぼ何も変わりません。
    特筆すべきなのは、ランダムがかなり良くなっていることです。通常の読み書きデータはシーケンシャル(連続)であることは少なく、実使用ではランダムが重視されますが、最悪値でも29倍、最高値は99倍の早さです。これが起動時間がおおよそ3分の1にまで短縮された大きな要因かと思います。磁気ヘッドのような物理的な移動がない分、ランダムなデータ選択も早いと思います。

 

  • SSDへの換装により、起動はもちろん起動後も驚くほど速く動作し、かなりストレスがなくなりました。ネット接続の待ち時間の方が遅いと感じるぐらいです。これM2SSD(NVMe)だと、SATA3の7倍らしいですから、爆速なのでしょうかね。SATA2を十分引き出すSSDであれば、普通の用途であればSATA3やM2などにこだわらなくてもただSSDにするだけで十分+αであることが分かりました。

 

 

東芝
  • 起動時間(電源ボタンONからハードディスクのアクセスが落ち着くまで)
    • 通常:3分59秒
    • 高速スタートアップ:1分23秒

 

  • メインハードディスク  Seagate/1TB/5400rpm/SATA600対応 → SSD
     

 

 

  • 比較テスト用ハードディスク(USB3.0接続)  東芝/1TB/7200rpm/SATA600対応 → SSD
     

 

  • こっちは比較的新しいマシンなので、マザーがSATA3対応で、ハードディスクもSATA3対応とフル装備なので、規格的には600MB/sまで出る条件です。

    ハードディスク / メインの5400rpmではMSIのSATA2に負けています。回転数が遅い影響でしょうか。
    試しにMSIのメインハードディスクの予備として在庫していた同一モデルの新品をUSB3.0(最大500MB/s)接続で測定してみたところ、MSIのメインハードディスクと同じような値がでましたので、ケースの性能、マザーの転送速度やCPUの影響はなさようです。

    総合的に考えると、磁気ハードディスクでは、200MB/sが頭打ちでSATA3は活かせないということが分かりました。他の方のネット情報なども参考にしても、200MB/sの壁を越えられないようです。

 

  • SSD / SATA3で、最大値でカタログ値(530MB/s)、を超える559MB/sが出ました。書き込みも最低473MB/sととかなり健闘しています。やはり、ランダムが劇的に改善しています。USB3.0接続より、やはり内蔵SATAの方が速度が出ました。

 

あとがき

 

  • 近頃のWindows OSやソフトウェアはかなり肥大化しており、ハードディスクの転送量が増加し、ハードディスクのボトルネックが顕著に影響し始めている。
  • 10年前のSATA2のパソコン(i7-870[2.93Ghz]、メモリ16GB)であっても、ハードディスクのボトルネックがシステム全体の速度を低下させているので実力を発揮できておらず、SSDに換装するだけでハードディスクのボトルネックがなくなり、特にランダムは29〜99倍と改善したため、OSブートやアプリ起動など普段使いでかなりレスポンスが良くなった。
  • このような細々としたアップグレードができる自作デスクトップPCは、製品の実用寿命をかなり延ばすことができるが、SSDへの交換は、メーカーPCでも比較的気軽に可能である。
  • 大容量なデータはTBWをかなりのペースで増加させるので、OSや普段使いにはSSD、バックアップ先などにはハードディスクと使い分けするのも1つの良い手。
  • CPUやメモリ量が一般的な使い方では十分なぐらい搭載しているPCが多いので、やはりボトルネックは磁気式ハードディスクであり、これをかなり安価になってきたSSDに換装することはかなりシステム全体のレスポンスを高めることができるものと結論する。

 


 

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